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第1話 ぼく、幼稚園の時にお母さんが入れ替わったんです。
「ぼく、幼稚園の時にお母さんが入れ替わったんです。」金井さんに僕は言った。
金井さんは僕が入院中のS病院に実習に来ていた看護実習生だ。どうも今日から2週間僕の担当になるらしい。午前中の1時間と午後の1時間、毎日僕と1対1で話をする様だ。S病院は精神科の病院で、金井さんは将来、精神科の看護婦さんになりたいらしい。
僕の第一声に金井さんは興味を示した。
「青葉町のアパート」このキーワードを覚えておいてください。僕は金井さんに念を押した。青葉町のアパートとは、僕が幼少期を過ごした、宮城県仙台市の青葉町と言うところにあるアパートです。そこにお父さんとお母さん、僕と妹の4人家族で住んでいました。
僕が幼稚園の年長組の頃のある日、お母さんに仙台駅前の大型スーパーマーケットに買い物に連れていかれました。たしかお肉売り場だったと覚えています。
幼稚園児の僕はお肉なんかに興味が無かったので、お母さんがお肉を見ている間、別の売り場をうろうろしていました。飽きたのでお母さんの元に戻り、お母さんの服の袖を引っ張ったら、振り向いた人は知らないおばさんでした。でも僕は、そのおばさんに「お兄ちゃん帰りましょ」と言われて青葉町のアパートまで帰りました。確かに知らない人でした。でも、帰った先は確かに僕の家でした。
そんな不思議体験をした夜の事です。僕は一人でお風呂に入っていました。なんで幼稚園児が一人でお風呂?と思うかもしれませんが、うちでは当たり前のことでした。
僕の家のお風呂は今で言うユニットバスとかでは無く、タイル貼りのお風呂場に風呂釜と湯舟が置いてあり、風呂釜と湯舟を繋ぐパイプの様な物があり、風呂釜と湯舟の間に少し隙間があるタイプでした。
入浴中、なぜかその隙間が気になり、と言うか、その隙間を見なければ成らない気がして隙間を覗き込みました。そこにはお母さんの死体がありました。なぜお母さんの死体と分かったのかは覚えていません。たぶん顔が見えたのだと思います。
分かり辛いですよね。昔の湯舟って、湯舟に4本の足が付いていて、風呂場のタイルの上にその足で湯舟が置いてあるんです。だからタイルと湯舟の間には空間が有って、そこにお母さんの死体が有ったんです。
金井さんは平成生まれなので昭和のお風呂の構造が理解できなかったので、僕は紙に絵を描いて説明しました。
僕はその時、子供ながらに「このことは絶対に誰にも言ってはいけない」と思いました。子供だったから、そう言う感情までは無かったと思いますが、お父さんや、僕をスーパーマーケットから連れて帰ってきたおばさん、そして妹にも言ってはいけない。言ったら殺されると思ったんだと思います。その日から、僕は、その知らないおばさんをお母さんとして生きて来ました。
その後20年以上の歳月が過ぎ、僕が28歳の時です。なぜか、妹としみじみと語り合う機会がありました。
妹は僕に言いました「お兄ちゃん知ってる?今のお母さんは本当のお母さんじゃ無いんだよ」。僕は「なんで?」と問いました。妹は言いました「だって私、青葉町のアパートで本当のお母さんの死体見たもん」。僕はゾッとしました。そして妹に聞きました「青葉町のアパートのどこで見たの?」。妹は答えました「お風呂の下」。
金井さんもゾッとしました。
僕は金井さんに聞きました「こう言うのって第三者認証と言っていいですよね?」。金井さんはうなずきました。
第三者認証とは、自分しか知らないはずの秘密を、他の人が知っていたら、それは間違いなく真実であると言う裏付けのことです。僕は青葉町のアパートでお母さんの死体を見たことを誰にも話していませんでした。“あれは気のせいだ”と自分に言い聞かせて、自分自身でも忘れたつもりになっていたのです。
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