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第2話 妹のお母さんは、お父さんの愛人である可能性


 金井さんは「青葉町のアパートでお母さんの死体を見たのは事実だと思います。では、そのスーパーマーケットから西田さんを連れ帰ったおばさんはいったい誰なのですか?」と僕に聞いた。
 「西田」とは僕のこと、本名「西田一(ニシダハジメ)」である。

 「妹は、お母さんに嫌われていました」僕は金井さんに家族の中の妹について説明していました。
 ここで言うお母さんと言うのは、入れ替わったおばさんの事です。

 お母さんは、よく僕を膝枕で耳かきをしてくれました。その時に「お兄ちゃんが大きくなったらお父さんとは離婚するから、そしたらお兄ちゃんがお母さんを養うのよ。信子ちゃんはお父さんにくれてやるから」この言葉をまるで僕の精神に擦り込む様に、何度も何度も聞かされました。
 「信子」とは僕の妹の名前です。
 僕は、子供ながらに、お母さんが妹を嫌っている事を心に感じていました。

 「他にも変なことがいっぱいあるんです。妹のお母さんは、お父さんの愛人である可能性があります。」僕の唐突な切り出しに金井さんは「どうしてそう言う話になるのですか?」と不思議な顔をしたので、僕はその可能性にあたる話を、順を追ってでは無く、箇条書きの切れ端の様な言い方で伝えた。

 まず顔が似ていないこと。妹は僕たちが通っていた中学校で5本の指に入る美人であることを金井さんに伝えた。でもこれはミスだった。逆に金井さんは僕の言っている事の信憑性に疑問を感じた様だった。

 その後は、どうにか金井さんに真実をわかって貰いたくてマシンガントークの様に、僕と妹の母親が違う可能性を伝えた。

 僕が小学生の時に、仲人さんに結婚10年の報告をしに仲人さんの家に挨拶をすると言うイベントがあって、その時に仲人さんが「あの時は、急に結婚式をしなきゃならなくなって、バタバタして大変だった」と言っていたこと。

 僕が小学生の時に、お母さんに知らないお寺に僕だけが連れていかれて「ここには水子地蔵があるのよ。本当はお兄ちゃんには弟か妹がいたのよ」と言われ「妹いるじゃん」と言ったら「信子ちゃんは関係ないの!」と言われたこと。

 僕が中学生の時に、深夜2時に車で家族4人で仙台港の船着き場で、周りに誰も居ないことを確認して“しんみり”している時に、なぜかお父さんとお母さんが新婚旅行は大阪万博だったことを話し出し、それに対して僕が、僕の誕生日が1970年の11月であるとこに疑問を抱き突き詰めたところ「お兄ちゃんは本当にお父さんとお母さんの子供なのよ」と言われたこと。※大阪万博は1970年の夏の開催であり、結婚から出産までの期間が短すぎることを僕が指摘した。※たぶんこの時に僕が疑問を呈しなかったら、そのままアクセルを目いっぱいに踏み込み入水自殺をするつもりだったんだと思います。

 母子手帳やへその緒は、僕の分は有るのに、妹の分は無いこと。

 全てが断片的な話であり、この説明で金井さんを納得させることに無理があると考えた僕は、紙にペンで時系列を書きだした。
 まずお父さんとお母さんはお見合い結婚であったこと。でも仲人さんの発言では急に結婚しなければ成らなく成った。そして結婚から出産までの時期が短いことを総合すると、お父さんとお母さんは、お見合いの結果は結婚する予定では無かったのに、結婚する気もない2人の間に僕と言う子供ができてしまい、今で言う“出来ちゃった結婚”であること。
 水子の話では、僕の本当の弟か妹は、お母さんが妊娠中に階段から足を踏み外し流産したこと。でも僕の誕生日は1970年11月であり、妹の信子の誕生日が1972年1月であること。経った14か月の間に流産まで経験した母親が、妹の信子を出産したとは考えにくいこと。
 僕は、横に長い線を一本、紙に書いた。これは時間である。
 そして、僕が生まれた日をその線の上に印を付け、その直後に、上から落ちてくる別の縦線を描いた。その縦線は、最初の横線の少し上で直角に右に曲がり、最初の横線と平行に横に伸びた。そこに僕は、妹の信子が生まれた日の印を付けた。その線はその後少し横に伸び、僕は、その線の末尾に×印を描いた。信子の母親が殺された日だ。
 金井さんには二段階に話を区切って説明した。
 最初の横線を“これは時間である”と言ったが、実はこれは、僕の本当のお母さんの生存期間であり、横一直線であると言うことは、この人は、最初から居て今も居る人。そして、落ちてきた縦線が、お父さんの愛人である。
 もし、本当にそうだとするならば「神様は残酷なことをする」と僕は金井さんに言った。
 僕の父親は、性の虜に成った結果、好きでも無い見合い相手とセックスをしてしまい、昭和45年(1970年)と言う時代背景から、子供が出来た以上結婚しなければ成らなくなり、仕方なく僕の母親と結婚した。でもその直後に、自分の好きなタイプの女性である信子の母親と出会い恋に落ち信子を妊娠した。二人は愛人関係となり、二人の間に信子が生まれた。それと同時期に僕の母親も第二子を妊娠しており、階段から足を踏み外したと言うのは嘘で、実は父親が腹を殴って流産させたとか言うことだろう。

 喋っていて、無理がある説明だと金井さんに思われたのでは無いかと、僕は金井さんの方を見た。金井さんは意外な反応をしていた。僕の説明を理解できていたのだ。「でも最終的に愛人が邪魔になって、愛人を二人で殺した」金井さんの方から結論を言ってしまった。
 僕の頭の中にある筋書きはその通りだった。ただ僕の頭の中の方がもう少し細かい。
 当時、青葉町のアパートの僕の家には電話が無かったと記憶している。電話が来ると大家さんが「西田さん電話ですよ」と声を掛けてきたと記憶している。つまり、親戚縁者と密に連絡を取り合う様な時代では無かったのだ。その間、本当の母親がどうしていたのかは分からないが、信子が生まれてから数年間は、僕は父親の愛人である信子の母親に育てられ、その人をお母さんだと勘違いしていたのだと思う。ただ、世間体の面から見ると異常な状況であり、実際に結婚した相手と違う人と家族を装うっているのは無理があったのだろう。だから信子の母親を殺し、僕の本当の母親である人を、お母さんのポジションに戻したのだと思う。僕も、信子も、“お母さんが入れ替わった”と思って当然である。



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