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第4話 妹の発病と“機能不全家族”


 妹が精神病を発病したのは小学校5年生くらいの時だと思う。
 お母さんと一緒に電車に乗っている時に、なにか人形か何かを電車の窓のところに置いて遊んでいた時に、電車が揺れて、その人形か何かが電車の窓から外に落ちてしまい、電車の中で大声をあげて泣き叫んだらしい。その時の状況をお母さんがお父さんに報告した結果、病院に連れて行った方がイイと言う話に成ったと僕は記憶している。
 その時にお父さんとお母さんが「精神科は恥ずかしいからダメだ」と話していたと思う。「なんでですか?」精神科の看護師を目指している金井さんにとっては“精神科が恥ずかしい”と言うことが納得できない感じで僕に問うた。僕は、昭和50年代と言う時代背景から“精神科は恥ずかしい”を金井さんに理解してもらおうと必死で説明したが、“精神科は恥ずかしい”とは金井さんにとっては侮辱でしかなかったので、理解はしてもらえなかった。仕方がないので“精神科は恥ずかしい”と言う前提で話を進めた。
 お父さんとお母さんは、地元で“阿部医者”と呼ばれていた内科に妹を連れていくことにした。当時僕たち家族が住んでいたのは、宮城県仙台市の高砂地区と言う場所で、“阿部医者”くらいしか病院が無かった。正確には近くに“厚生年金病院”と言うのもあったが、そこは入院とかをする大病院であり、風邪とか普通の症状で受診するものでは無いと言う感覚だったので“阿部医者”にしたのだと思う。
 “阿部医者”に妹を連れて行ったのはお母さんだった。
 今思えば、精神に関する診察を内科に頼んだのが失敗だった。“阿部医者”の先生は、こともあろうか妹本人が居る前で、お母さんに対して「この子は精神病ですね。この子の将来はもう終わりだ。結婚してもマタニティーブルーとか言うやつでろくに出産もできない」とか、“阿部医者”が知っている精神病に関する知識をべらべらと喋ったらしい。帰ってきた妹が「私の人生はもう終わりなの?」と泣いていたことを覚えている。これは小さな田舎町の小さな医院で起きた、たわいもない話だが、当の妹本人にしてみれば、人生の分岐点にも当たる重大事件だった。
 “阿部医者”に行った後、妹の精神状態は何日も荒れた。泣き叫び収拾がつかなく成った。見かねたお父さんが、厚生年金病院へ連れていく様に、お母さんに促した。
 厚生年金病院での診察の結果は、驚くべきものだった。妹を連れて行ったお母さんが怒って帰って来たのを鮮明に覚えている。「なんで私が精神科なんかに通院しなきゃならないの!?冗談じゃないわ!」お母さんは怒っていた。厚生年金病院の精神科の先生に「娘さんを診るより、お母さんを診た方が早そうだ」と言われたらしい。「なんとなく言いたいことが分かります」と金井さんがうなずいた。
 確かにその通りである。当時は何の話なのか僕にも全く分からなかったが、僕の家族は“機能不全家族”だった。お父さんの飲酒が最優先事項であり、子供のことなどかえりみない両親がそこには居た。お母さんが子供に対して愛情が無い人だと言うことは、僕は小学校低学年のころから分かっていた。僕が電車の車内で泣いた時もそうだった。お母さんは僕の口を手で押さえ付け「恥ずかしいでしょ!」と僕を叱った。僕がなんで泣いたかなんて理由はどうでもよかったのだ。ただ単に“恥ずかしいから黙らせる”と言う行動をとる人だった。そこに子供を思う気持ちとかは無かった。
 “機能不全家族”その一言で済ませられる。毎日毎日、お母さんは“お父さんが暴れる準備を整える為に”酒とつまみを用意して、その暴力に耐えていた。お母さんはそんな自分に酔っていたのだと思う。“こんな可哀相な私”に酔っていたのだと思う。お父さんが酒に酔って暴れ、お母さんはその暴力に耐える事こそが家族の中心事項であり、それ以外のことはどうでもよかったのだと思う。

 妹の通院先は、田舎者の浅知恵で“大きい病院の方がいいだろう”と言うことになり、 “国立仙台病院”に決まった。すぐに入院することとなり、妹は23歳まで国立仙台病院で入退院を繰り返した。
 妹が22歳のとき、僕は妹の病状が気になり、国立仙台病院の先生に会いに行ったことがある。病状を問い合わせる僕に対して先生は「妹さんは病気じゃありませんよ。単なる性格です。」とあっさりした口調で言った。「心身症と言う病気だと聞いていますが。。。」僕の問いに先生は「病名が無いと診察が出来ないんですよ」と答えた。なんとなく先生の言っていることが分かった気がした。



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