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第9話 お母さんとの別れ


 お母さんは世間体を第一に考える人だった。妹が離婚した後、妹が化粧をして出掛けようとすると「出戻りが化粧なんかしやがって恰好悪い」と嫌味を言っていた。
 愛されていないことはずっと前から気付いていただろうが、あからさまに煙たがられて、妹はキレた。ただでさえ離婚、実の子との別れ、心が辛かっただろうに、その上、世間体を何よりも尊重する母親の態度。妹の精神状態はもう極限まで来ていた。
 最初の反逆行動は、ベランダの窓ガラスに瓶を投げつけ割ることだった。誰も居ない部屋でそれは行われた。2回目の反逆行動は、台所全体にマヨネーズをぶちまけ使えない様にした。これも誰も居ない時だった。
 3回目の反逆行動は“出戻りが恥ずかしい”と嫌味を言う母親本人に向けられた。妹はカミソリを握り、お母さんを切り付けた。お母さんは財布だけを持って家を出たらしい。僕はその場に居なかった。

 妹の3回目の反逆行動の夜、お母さんから僕の携帯電話に電話が来た。「警察沙汰になっちゃったのよ。もうお母さんにはお兄ちゃんしか居ないの。お母さんを助けて」と言っていた。僕は冷静にお母さんに問い合わせた。そして呆れた。交番に保護を求めて駆け込んだのは、お母さん本人だった。それを“警察沙汰になった”と言うのだろうか?自分で“警察沙汰”にしたのである。今は警察にかくまわれていて何処に居るかは言えないと言う。
 自業自得だと思った。幼いころから娘を愛さなかった母親、その上、自分が言った嫌味のせいで娘に刃物を向けられたのだ。
 「あんたが悪いんだ。あんたが信子を愛さなかったから信子は暴れた。すべてあんたのせいだ」僕はお母さんを責め立てた。「お母さんを見捨てないで」「お母さんを見捨てないで」「お母さんを見捨てないで」お母さんは泣き叫んでいた。公衆電話のお金が尽きる“ブー”と言う音が聞こえた。公衆電話から携帯電話に電話していたのだ。10円で話せる時間は10秒くらいだろう。プツっと電話が切れた。それが僕とお母さんの最後だった。お母さんは最後の最後まで“自分のことしか考えていない人”だった。



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