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第4話 私達が払った税金で生活保護を受けて酒を飲んでいる奴は許せない


 幸福荘に住んで4年が経った。毎日毎日、朝から酒を飲み、ただそれだけの人生が過ぎ去った。“このまま一生生活保護でいいや”そう思っていた。酒を“美味しい”と思ったことは無かった。ただ単に、“飲まずにやってられない”かった。

 そんなある日、“うるせーんだよ!”怒鳴り声が聞こえて、僕の部屋のドアが蹴られた。それは誰だかわからない。何がうるさいのかもわからない。“うるせーんだよ!”と言ってドアを蹴られる。そんな日々が毎日続いた。
 今思えば、あれは“幻覚”“幻聴”だったのだろう。“うるせーんだよ!”言われた瞬間にドアを開けたが、誰も居ない。毎回そうだった。僕は“うるせーんだよ!”と言われてドアを蹴られることに病んでしまった。交番に相談した。幸福荘にお巡りさんが来た。管理人さんに僕の被害を聞き取り調査するためだ。お巡りさんは、2、3質問しただけで帰ってしまった。

 「私達が払った税金で生活保護を受けて酒を飲んでいる奴は許せない!出ていけー!!」ビジネスホテルの管理人さんに怒鳴られた。「これから区役所に連絡する。次の住処は区役所の人に探してもらいな!」僕は管理人さんに追い出された。
 仕方が無く僕は区役所のケースワーカーを訪ねた。僕が相談する前に、向こうの準備は出来ていた。「幸福荘追い出されたらしいですね?」僕に言ったのは知らないオジサンだった。ケースワーカーの隣に知らないオジサンが座っていて、そのオジサンが話を進めた。「西田さんには山梨県の病院に三ヶ月入院してもらいます。その後は臨海地区にあるホームレスの施設に入所してもらいます」オジサンがそう言うのだ。ケースワーカーは黙っていた。今思えば、あのオジサンはケースワーカーの上司だろう。僕のケースワーカーは大学を出たての新人だったからだ。僕は、何がどうなっているのかなにもわからずに、ひたすらうなずいていた。たぶん僕には管理人さんが怒った理由がわかっていたのだろう。ただただうなずくしかなかった。

 区役所から帰った僕は、管理人さんに“入院”の話をして、それまで住まわせてもらえる様に頼んだ。結果は“いいですよ”と言うことだった。
 “悪いことは続く”と言うか、不思議なことが起きた。その日の夜に“amazon”からメールが届いた。“amazonマスターカードを作りませんか?”と言うお知らせだった。つまり“クレジットカードを作りませんか?”と言うお誘いだった。僕は“どうせ審査なんか通らないだろう”と思いつつも、入会の手続きをした。生活保護だと言うことは伏せて、職業を“アルバイト”と偽った。“キャッシング枠が必要な方は収入証明証をご提示いただく可能性があります”と書かれていたので、“キャッシング有”のチェックボックスを外して申し込んだ。30分くらいでメールが届いた。なんと!100万円のショッピング枠が貰えたのだ。“カードは数日で郵送します”とのことで“それまではamazonテンポラリカードをご利用ください”と記載されていた。“amazonテンポラリカード”とはamazonだけで使えるバーチャルなクレジットカードだ。僕のamazonアカウントを見ると、支払い方法の欄に“amazonテンポラリカード”が選択できる様になっていた。正直、100万円のクレジット枠をいきなり貰えるのは怪しいと思った。でもそれと同時に“もしこのamazonテンポラリカードで買い物が出来れば、後日郵送されてくるクレジットカードは確定している”と言う実験を試みる脳が働いた。試しにamazonテンポラリカードで3千円ほどのサプリメントを購入してみた。次の日、アマゾンの注文履歴を見てみるとamazonテンポラリカードで買ったサプリメントが“輸送中”に成っていた。つまり、100万円のショッピング枠はウソでは無く、本当に確定していたのだ。
 僕は2日悩んだ。そしてその間に友人に相談した。友人は会社社長で、千葉県松戸市にマンションの一室を倉庫として借りていた。僕は、その倉庫に住民票を置いて住まわせてくれと友人に頼んだ。友人は“いいよ”と一つ返事で了承してくれた。悩んだ結果、僕の悪知恵は成立したのだ。申し込んで3日後に本物のクレジットカードが届いた。書面には確かに“ショッピング限度額100万円”と書いてあった。しかもリボ払い専用カードだったので、使っても一ヶ月の返済金額は数千円だった。“これで区役所の言い成りから脱出できる”僕はそう確信した。僕はそのクレジットカードを握って区役所に走った。
 区役所に着きケースワーカーを呼び出した。ケースワーカーが単独で出てきた。前に会ったオジサンは不在らしかった。僕はケースワーカーに全てを話した。住む場所が決まったこと、そして当面の生活費が確保出来たことをクレジットカードを見せて説明した。今思えば、ケースワーカーの経験が浅かったのだと思う。ケースワーカーは、僕が要求した“生活保護辞退”をその場で了承してくれた。僕は自由の身となった。もう入院しなくてもいい。ホームレスの施設に入らなくても良い。僕は、その日の内に区役所に転出届を提出し、次の日には千葉県松戸市に転入した。100万円あれば半年は暮らせる。その間にアルバイトでも見付ければよい。僕の心は新天地への思いで踊っていた。



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