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第5話 幻覚・幻聴に悩まされる日々


 松戸に住み。酒を飲んだ。引っ越した当日から酒を飲んだ。“うるせーんだよ!”隣の部屋から怒鳴り声がして、壁を殴られた。なにがうるさいのだろう。テレビの音量だろうか?でも深夜や早朝ではない。夜8時だった。“うるせーんだよ!”また壁を殴られた。ベランダに隣の住民が瓶の様な物を投げてきた。“バリーン!”瓶が砕ける音が鳴り響いた。怖かった。怖かった。だから僕は酒を大量に飲んだ。せっかく引っ越してきたのに、引っ越し先でも同じ体験をするなんて、しかも同じではない。前よりもひどくなっている。
 気が付くと焼酎のボトルが3本空いていた。夜の内にコンビニに買いに行ったのだろう。全く覚えていない。僕はベランダを見た。そこには、投げ込まれたハズの瓶が無かった。呆然とした。すべては幻覚だった。前に住んでいたビジネスホテルでの隣人の仕打ちもたぶん幻覚だったのだろう。そう思った。

 “カチャン”ストレッチャーが上がる音と振動で僕は目を覚ました。寒かった。「大丈夫ですか?お名前は?」救急隊員に聞かれた。どうも僕は救急車に乗せられるところらしい。「お名前と住所わかりますか?」その質問に僕は普通に答えた。「なんだここじゃん。何号室?服とって来るから。鍵空いてますか?」。どうも僕は全裸らしい。スマホだけを握りしめて路上に全裸で転がっているところを通行人の人が見つけて119番通報してくれたらしいのだ。救急隊員の人が部屋からズボンとシャツを持ってきてくれた。幸いなことに持ってきてくれたズボンには財布が入っていた。「新松戸中央総合病院に搬送しますが宜しいですか?」救急隊員の問いに「はい」と答えた。何が起きたのか分からなかった。
 新松戸中央総合病院の緊急処置室に運び込まれた。「脱水ですね」ドクターが言った。「なんで全裸なのかわかりますか?」と聞かれて「わかりません」と答えた。後になって思い付いたのだが、たぶん酒を飲んで風呂に入っていて、気を失いかけて、あわてて部屋から飛び出したのだと思う。点滴を3袋打たれた。
 治療が終わると、僕はなぜか、松戸の部屋を貸してくれている会社社長に電話を掛けた。必要の無い電話だったと後から思う。ただ、ただ、自分の異常行動を、“分かってくれる人”に知らせたかった。だって、自分でも理解できないことなのだから、誰かに分析してもらうしか無いと思った。「松戸での生活はもうやめた方がいい。だって隣の住民に暴力を振るわれているんだろ?」社長は状況を理解していた。僕が“酒に逃げるしか無い”状況であることを理解していた。「どこか別のところに、隣に音が漏れない鉄筋コンクリートの物件を借りて住みな。力になるから」そう言ってくれた。
 確かに、前に住んでいたビジネスホテルの壁は薄かった。隣の部屋の音が丸聞こえだった。松戸の部屋も、“鉄骨造り”だった。骨組みだけで壁は薄かったのかも知れない。そう思った。なるほど鉄筋コンクリートの家に引っ越せば“壁を殴られる”心配も無い。僕は単純に理解した。この時は、 “壁を殴られる”は“幻覚”“幻聴”である可能性について、はっきりとは理解できていなかったのだと思う。だって“鉄筋コンクリートの家に引っ越せばいい”と安易に納得したからである。



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